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外科

外科

消化器外科・一般外科

外科 診療科紹介

近年診療科目が細分化する一方で血管内治療や内視鏡治療さらに医療ロボットや再生医療等の進歩により外科の役割も大きく変わりつつあります。しかしながら医学の発展が目覚ましい現代においても残念ながら全ての生命には限りがあるのが現実です。

人体の臓器は互いに密接に関わりを持ちながら外乱に耐えつつ生を繋ぎますが、外乱等により修復困難となった臓器に対して「知恵」を埋め込み生命を維持するのが外科医の使命です。しかしながら判断を誤れば障害を加えるだけに終わり治療効果が得られません。
外科が取り組むべき急性期治療においてAIが主役となる日はまだしばらく先の事ですが、今後もさらに医師として全人的な知識と経験を磨くべく患者様の「人生の満足度」を第1に考えて日々の診療に取り組んでまいります。

対象となる方(疾患)

  • 外傷、炎症性疾患等の救急対応
  • 消化器疾患の外科的治療および化学療法
  • 乳腺と内分泌疾患の診療、術後のバックアップ
  • 肛門疾患の診療

※当院は二次救急指定病院で、開院当初から救急医療に力を注いでおります。交通事故や出血を伴う外傷(怪我)に十分対応できます。小さなお子様の怪我(擦り傷、切り傷など)にも対応可能です。

胃がん、大腸がん、腸閉塞、胆石症、胆嚢炎、虫垂炎、ソ径ヘルニア(脱腸)、急性胃腸炎などの消化器疾患の診断および治療を行っております。内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)、腹部CT・MRI検査、腹部超音波検査等の診断に必要な検査は随時実施しております。
外科治療に関しても、患者様の身体への負担の少ない低侵襲手術や、進行癌に対する拡大手術や、全身化学療法を行っております。
兵庫県立がんセンターと連携して、がん患者の24時間緊急受け入れ態勢を備えており、がん末期における緩和ケアにも取り組んでおります。
また、胃瘻造設術や癌化学療法及び在宅患者様のための中心静脈埋込型カテーテル設置術も実施しております。 (近隣医療機関様からのご依頼を承ります。地域医療連携室までご連絡下さい。)

低侵襲手術(治療)
各疾患の治療法:胃がん大腸がん胆石症ソケイヘルニア虫垂炎直腸脱など

診察医師紹介

医師紹介 野木 佳男(のぎ よしお)
資格 医学博士
日本外科学会専門医
日本消化器学会専門医
略歴 昭和41年 神戸大学(医)卒
医師紹介 石木 邦忠(いしき くにただ)
資格 医学博士
略歴 昭和62年 香川医科大学 卒
医師紹介 大村 泰之(おおむら やすし)
資格 医学博士
日本内視鏡外科学会 技術認定医
日本消化器外科学会 専門医、指導医
日本外科学会 専門医
日本がん治療 認定医
略歴 平成4年 岡山大学(医)卒

低侵襲手術(治療)

近年、医療機器や技術の進歩により、がんと診断され病巣の切除が必要になった患者様に対して、身体への負担が少ない治療法が開発され、提供出来るようになっております。
周囲のリンパ節や多臓器への転移の可能性のない非常に早期の病変には、胃カメラや大腸カメラ検査の延長線上の治療として、消化器内視鏡専門医による、内視鏡的手術(内視鏡的粘膜切除や内視鏡的粘膜下層剥離術)を行い、周囲のリンパ節切除が必要な病変でも、従来の開腹手術のようにおなかを大きく切ることなく、小さな創から腹腔鏡というカメラをおなかの中に挿入して、これから映し出される画像を見ながら行う腹腔鏡下手術を行うことによって、開腹術と同等以上の治療をする事が可能であります。

当院では、こういった体への負担の少ない治療法を確実で精度の高い技術で提供出来るように設備やスタッフを整備しております。

腹腔鏡下手術

当院では幅広い消化器・腹壁疾患に対し、高画質の3次元画像での腹腔鏡手術を行うことが可能な、最新の3Dフレキシブル腹腔鏡を導入し、さらにこの高画質カメラの利点を最大限活用することを目的に、ブレのない安定した術野コントロールが可能となる、ロボティックスコープホルダーも導入しております。

各疾患の治療法

胃がん

概説

胃は食道につづいて上腹部ほぼ中央にあり、入り口から出口にかけて、入口部分である噴門部、胃の中心部分である体部、十二指腸側への出口部分の幽門部に大きく分けられます。
胃壁の構造も内側から粘膜・粘膜下層・筋層・漿膜となっています。多くの胃癌は粘膜創より発生し、胃壁の外に向かって徐々に深く浸潤していきます。このがんの外方向への進展は深達度と呼ばれています。癌が粘膜下層までの深さにとどまっているものを早期胃癌、癌が筋層より深くもぐり込んでいるものを進行胃癌といいます。

症状

早期胃癌では症状がないことも多いのですが、随伴する潰瘍や胃炎などがあると、痛み、出血、胃部不快感などが出現します。進行したがんの症状は、食べ物が通りにくくなったためにお腹が張ったり、体重が減ったり、つかえ感が強くなります。
また癌からの慢性的な出血による貧血のために動悸や息切れが生じることもあります。

検査

胃バリウム検査

胃を発泡剤で膨らませバリウムを飲んでいただきレントゲン撮影を行います。この検査によってがんの部位や大きさ、形などが把握できます。特にスキルス胃癌では病巣が内視鏡所見でみるよりも広範囲にわたることがあり、進展範囲の把握に重要となります。

胃内視鏡検査

胃バリウム検査では描出しにくい、凹凸の少なく粘膜内に留まるような早期がんの診断には、胃の内腔から調節観察可能な胃カメラが威力を発揮します。特に胃は大腸と比較して慢性炎症などによる粘膜異常と早期癌の判断が困難なことも多く、直接組織片を採取して組織学的検索を行う生検が可能であります。

腹部超音波検査、CTなどによって、リンパ節や多臓器への転移の有無を評価します。喘息や糖尿病、アレルギーなどがなければ、造影剤を注射しながらのCT撮影を行うことによって、より詳細な画像評価が可能となります。

診断

胃癌の進行の程度は、深達度(病変の深さ)・リンパ節転移の程度・他臓器(肺、肝臓、骨、脳など)転移の有無などを総合して、病期(stage)IからIVまでに分類されます。概説でも述べたように、早期胃がんと進行胃癌の分類は病変の深さのみで規定しており、リンパ節転移の有無は関与していません。
早期がんでも、粘膜内にとどまるものは3%ほどの転移頻度でありますが、粘膜下層まで達するものでは、15-20%と増えてくるため、内視鏡治療と外科的治療の適応の分かれ目になります。

当院では日本胃癌学会の「胃癌治療ガイドライン」に基づいて、患者さま・ご家族と相談の上で治療方針の決定を行っております。

治療法

外科的治療

胃癌の根治治療として現在、もっとも多くの患者様に行われている治療法です。
当院では内視鏡的治療(粘膜下層剥離術)の適応から外れる早期胃癌の患者様に外科的手術を行っています。標準手術で十分治癒が期待できる比較的早い段階で診断された患者様には低侵襲手術として腹腔鏡手術を、遠隔転移はないものの浸潤傾向の強い進行癌や、リンパ節に転移が疑われる患者様には病巣を残すことなく切除すべく、開腹による拡大手術を行っております。
切除範囲に関しては、がんの存在部位や発育形式によって決定しています。もっとも頻度が高い、胃の中ほどから出口側の癌であれば、入り口側を残した2/3以上の胃切除を行います。入り口側に近い早期胃癌では入り口側約1/2を切除することになります。
悪性度が高く、広範囲に広がるスキルス胃癌の場合は多くの場合、胃をすべて摘出する胃全摘が行われます。

腹腔鏡下手術

お腹を大きく開腹することなく、4ヶ所に5-12㎜程の創をいれ、二酸化炭素でお腹を膨らませた上で、腹腔鏡と呼ばれるカメラを挿入し、これより映し出される画像をモニターで見ながら行う手術です。
各種機器の進歩と手技の向上に伴い、従来の開腹手術では得られなかったような繊細な手術が可能となっています。
以前は切除した胃の取り出しと残った胃と十二指腸をつなぐ再建目的にみぞおちに約5cmの小さな開腹創をおいていましたが、最近では再建もお腹の中でモニターを見ながら行うことも可能となり、臓器の取り出しに必要な最低限の創(臍部約3㎝)の創で行うことにより、術後の痛みがさらに軽減した手技が可能となっています。

開腹手術

進行した胃癌に関する腹腔鏡下手術の成績に関してのデータは不十分で、開腹手術の対象としています。
そのほか、巨大な腫瘍で周辺臓器への浸潤などが認められても、切除しなければ予後は期待できないため、根治できる可能性がある場合は、横行結腸、脾臓、膵臓(尾側)、肝臓など積極的に合併切除を行っております。

大腸がん

概説

大腸(結腸と直腸)に発生する悪性腫瘍で、近年我が国でも増加傾向の著しい癌です。
大腸は大きく分けて肛門に近い直腸と結腸に区分されます。小腸に続く結腸は、口側から順に、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に分類され、直腸は、直腸S状部、上部直腸、下部直腸に区分されています。

症状

早期の癌ではほとんど症状がなく、検診として行われる便潜血反応(便の中に微量の血液が含まれるかどうかを調べる)が陽性となり精密検査として行われる下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)で発見されることがあります。
ある程度進んだ大腸癌では、癌により腸の内腔が狭くなり便の通りが悪くなることに起因する症状(便が出にくい、下痢と便秘を繰り返す、下痢便しか出ないなど)と、癌の部分からの出血による症状が現れます。
また、癌で狭くなった部分を通過させようとして腸の蠕動が亢進し、腹痛が出ることもあります。完全に詰まってしまった状態で腸閉塞をきたして初めて来院される患者様もおられます。
ただ、大腸癌はたとえ進行していた場合でも、肝臓や肺などの遠隔臓器に転移していない場合は、十分な局所の腸切除により根治可能な例も多くあります。

検査

下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)

下剤を十分飲んだ上で、大腸の中に便がない状態にして、肛門からカメラを挿入して行う検査です。
大腸癌が出来る患者様は多発病変が認められることが多く、通常の大腸カメラでとれる段階で発見された病変は切除しておくことが望ましいです。
直接組織片を採取して組織学的検索を行う生検が可能であるほか、外科的手術が必要な患者さんで手術の時に病変の場所がおなかの中からみて分かりやすいように印(マーキング)を付けることが可能です。

注腸造影(大腸バリウム造影)

下剤を十分飲んだ上で、大腸の中に便がない状態にして、肛門からバリウムと空気を注入してレントゲン撮影を行う検査です。
特に横行結腸や下行結腸では大腸カメラ検査だけでは病変の場所を把握するのが困難なことが多く、またS状結腸から直腸の病変においても術式の決定に欠かせない検査であります。

腹部超音波検査、CTなどによって、リンパ節や多臓器への転移の有無を評価します。喘息や糖尿病、アレルギーなどがなければ、造影剤を注射しながらのCT撮影を行うことによって、より詳細な画像評価が可能となります。

診断

大腸癌の進行の程度は、深達度(病変の深さ)・リンパ節転移の程度・他臓器(肺、肝臓、骨、脳など)転移の有無などを総合して、病期(stage)0からIVまでに分類されます。

当院では大腸癌研究会の「大腸癌治療ガイドライン」に基づいて、患者さま・ご家族と相談の上で治療方針の決定を行っております。

治療法

内視鏡的治療

粘膜内や粘膜下層の比較的浅い範囲に留まっている癌の場合には、内視鏡切除によって治療を完了することができます。
内視鏡的治療は、大腸の内腔の表層だけをはぎ取るという局所切除のため、リンパ節転移の可能性のほぼない癌に行われます。切除された病変を検索し、病変のどこにもリンパ管や静脈への浸潤がないこと、粘膜下層への浸潤がないこと、切り口にがんがなく完全に切除していることを顕微鏡的に確認します。合併症としては、出血と穿孔がありますが、多くは内視鏡的に対処可能であります。
組織学的にリンパ節転移の可能性がある程度予想される結果であれば、外科的追加切除(多くは腹腔鏡下手術)を行い、縮小手術選択のため生命予後が低下することのないよう、術前に十分説明したうえで治療を行っております。

外科的治療

大腸癌の根治治療として現在、もっとも多くの患者様に行われている治療法です。
当院では内視鏡的治療(粘膜下層剥離術)の適応から外れるほとんどの患者様に腹腔鏡手術を行っております。胃癌と異なり大腸癌の場合は血管走行やリンパ流が単純なことより、腹腔鏡下に開腹手術と同等の手技が低侵襲手術として行うことができ、世界的にも進行癌を対象として行っても良好な治療成績が証明されています。
腫瘍が非常に大きかったり、周辺の臓器に浸潤を認める場合は、開腹による拡大手術を行っております。

腹腔鏡下手術

お腹を大きく開腹することなく、4ヶ所に10㎜程の創をいれ、二酸化炭素でお腹を膨らませた上で、腹腔鏡と呼ばれるカメラを挿入し、これより映し出される画像をモニターで見ながら行う手術です。
各種機器の進歩と手技の向上に伴い、従来の開腹手術では得られなかったような繊細な手術が可能となっています。切除した大腸の取り出しと吻合を目的に、臍の上下に約5cmの小さな開腹創をおく手技を行っています。肛門温存がかなわない下部直腸進行癌などでは、会陰部の創から臓器を摘出するため、人工肛門に要する創以外に小開腹創は必要とはなりません。
創が小さいため、術後の回復も従来の開腹術と比較して早く、経過に問題なければ、ご高齢の方でも術後1週間ほどで退院は可能な状態になります。

胆石症

概説

肝臓で作られた胆汁が流れるルートに出来る結石が総称して胆石と呼ばれ、日本の統計では、胆石のうち最も多いのが胆のう結石で(約8割)、次いで総胆管結石(約2割)で、最近では肝内結石はごく少数であります。
一般的に胆石症というと最も多い胆のう結石症をさしますが、そのほかにもいろいろな胆石症があります。

症状

胆石の自覚症状として最も多いのは、右季肋部痛(右のわき腹の痛み)です。右の肋骨の下あたり(右肋弓下)に差し込むような痛みを感じ、背中に抜けるような痛み(放散痛)を伴うこともあります。
胆石の痛みは決まったところだけが痛むのではなく、人によって、みぞおち(心窩部痛)、おへその上のほう、右の肩甲骨(けんこうこつ)の下の方、腰のあたり、といろいろな場所に痛みの症状がでます。
痛みの種類も鋭く差し込むような痛み(疝痛、せんつう)や鈍い重苦しい痛み、肩こりのように張った感じ、など一様ではありません。
痛みとともに胆嚢内の胆汁に感染をきたすと、胆嚢炎を併発し、腹痛とともに発熱が生じることがあります。放っておくと胆嚢の壁が壊死をきたし(腐って)、胆汁性腹膜炎をきたすこともあります。

検査・診断

もっとも簡便で優先される検査は、腹部超音波検査(エコー検査)です。この検査で胆嚢の緊満や壁の肥厚、周囲のむくみが認められれば、ほぼ診断がついたと言ってよいでしょう。
特に胆嚢の真上にエコーの器械をあてて軽く圧迫した時にもっとも強い痛みがあることが特徴であります(Sonographic Murphy sign)。
その他、CT検査やMRIの検査も周囲臓器の状態把握に有用です。

治療

胆嚢炎を伴った胆石症と診断されれば、早期に胆嚢摘出術を行うことが推奨されています。その方法として現在もっとも多く行われているのが、腹腔鏡下胆嚢摘出術です。

腹腔鏡下胆嚢摘出術

従来法

お腹を大きく開腹することなく、4ヶ所に5-10㎜程の創をいれ、二酸化炭素でお腹を膨らませた上で、腹腔鏡と呼ばれるカメラを挿入し、これより映し出される画像をモニターで見ながら行う手術です。
以前、急性胆のう炎は適応外とされていましたが、発症後早期に行うことによって、合併症が減少や在院日数の短縮が可能となっています。
各種機器の進歩と手技の向上に伴い、従来の開腹手術では得られなかったような繊細な手術が可能となっています。

単孔式手術

臍を中心とした約2.5cmの創で曲がったカメラや鉗子を用いることによって行われる手術です。
何よりも時間が経てば、おなかの創はほとんど分からない状態となり、美容上優れた手術であることは間違いありません。
当院では従来法と単項式手術の両者の利点・欠点を説明させていただき、患者さま・ご家族と相談の上で術式の決定を行っております。

単孔式胆のう摘出術

ソケイヘルニア

概説

脚の付け根の壁が弱くなった部分から、おなかのなかの腸や脂肪が出てきて膨らんできたり、痛みを伴ったりする病態です。
大きく分けてソケイ靱帯(1)より上から出てくるソケイヘルニアには外ソケイヘルニア(2)と内ソケイヘルニア(3)があり、ソケイ靱帯よりも下で、脚にいく血管に沿って出てくる大腿ヘルニア(4)があります。
先天的な要素で小児期に発生するものと、成人になって組織が弱くなったり、腹圧が高くなることにより生じる後天的なものがあります。
ここでは頻度の高い成人のソケイヘルニアの治療法について紹介します。

外科的治療

物理的な要因で発生する疾患のため、根治するには外科的な手術が唯一の治療となります。
手術の方法として大きく分けて、前方アプローチ(従来法:ソケイ部から切開をいれて行う方法)と、腹腔内アプローチ(腹腔鏡下におなかの中から行う方法)があります。それぞれに長所・短所がありますが、両方の治療内容を十分説明の上で患者様に選択していただくようになります。
ここでは、比較的新しい手術方法で当院でも積極的に行っている腹腔鏡下ヘルニア修復術について解説します。

腹腔鏡下ヘルニア修復術

ソケイ部より離れた臍部を含め3ヶ所の小さな創から、腹腔鏡と呼ばれるカメラと長い鉗子を使って行う手術です。
直接おなかの中からヘルニア門(内臓が飛び出していた穴)を確認できるため診断が容易です。
また、成人のソケイヘルニアの患者様には、ヘルニアが発生しやすいおなかの壁の弱さや、高い腹圧などが背景にあるため、反対側のヘルニアも出来やすいと言えます。
腹右腔鏡でおなかの中から観察すると、あらたな創を追加することなく、反対側のソケイ部を見ることができ、体表からは確認することのできないような小さなヘルニアの有無が見つかることがあります。こういった場合でも、同じ創のまま両側のヘルニア修復が可能であります。
腹膜に切開をいれ、ヘルニアの袋をおなかの中に引き戻して、十分なスペースを確保した状態で、メッシュをあてて腹膜を閉じて手術終了となります。

利点としては

  • 創が小さく痛みが少ない
  • 反対側の観察が可能である
  • 大腿ヘルニアを含めたソケイ部すべての補強ができる
  • ソケイ部を触ることがないため、陰毛を剃る必要がない

などがあげられますが、全身麻酔が必要で、下腹部の癒着が予想されるような手術を受けたことがある方には困難な事もあります。

診断から治療までの流れ

01術前

心電図や肺機能など全身精査を行ったのちに手術日を決定することになります。
計画的な予定手術となりますので、ご本人のご都合を十分調整できる日程でご予約いただけます。

02入院

基本的には手術の前日にご入院いただきます。病室にも慣れていただき、治療計画の再確認をスタッフと行います。

03手術

手術は全身麻酔で行います。手術時間は1時間ほどですが、患者様の体型やおなかの中の状態によって前後します。
移動時間や麻酔をかける時間と麻酔から覚める時間を併せて2時間ほど手術室に入ることになります。両側の修復が必要になった場合はさらに1時間ほどかかります。

04術後

手術後は全身麻酔から十分覚めるまで、血圧計や心電図モニターをつけさせていただきます。
手術の次の朝には、自力でのトイレ歩行も行っていただきます。
術後経過に問題ないことが確認されれば退院となります。通常術後2日以降とさせていただいておりますが、希望されれば手術翌日の退院も可能です。退院当日から日常生活は十分可能です。
また、デスクワークであれば退院後1~2日で仕事に復帰することも可能ですが、無理をせず自信がついてからにすることをお勧めします。
退院後、2週間ほどで一度状態チェック目的に来院いただくようにしております。問題なければ1-2分の診察となりますが、ご協力いただければと思います。

虫垂炎

概説

虫垂炎はもっとも頻度の高い腹部救急疾患の一つで、軽症であれば抗生物質の投与で治癒することが可能ですが、中等度以上になれば外科的治療が必要となります。
みぞおちの痛みから、右下腹部痛に限局してくるのが典型的な症状ですが、特に成人の場合に同様の症状で手術を要さない憩室炎との鑑別が必要であります。
当院では不必要な手術を避けるために、基本的にはCT検査をさせていただき、虫垂炎の程度を含め検討したのちに手術を行うようにしております。

外科的治療

手術の方法として大きく分けて、小開腹法(従来法)と、腹腔内アプローチ(腹腔鏡下におなかの中から行う方法)があります。それぞれに長所・短所がありますが、両方の治療内容を十分説明の上で患者様に選択していただくようになります。
ここでは、比較的新しい手術方法で当院でも積極的に行っている腹腔鏡下虫垂切除術について解説します。

腹腔鏡下虫垂切除術

臍部を含め3ヶ所の小さな創から、腹腔鏡と呼ばれるカメラと長い鉗子を使って行う手術です。
超音波凝固切開装置という器械を用いて虫垂に至る血管などを処理したのちに、虫垂切除を行い、臍の12㎜ほどの創から体外に取り出して手術を終了します。

利点としては

  • 創が小さく痛みが少ない
  • 広い視野での手術が可能である
  • おなか全体に炎症が広がっている場合などカメラの向きを変えることで全体を洗浄することができる
  • 創の感染が少ない

などがあげられますが、診断が遅れて腸閉塞気味となっている場合はカメラを入れるスペースが確保できず、開腹で行うこともあります。

直腸脱

概説

直腸脱とは、加齢などで骨盤底の組織や肛門括約筋が脆弱になってしまい、おなかの中の臓器に圧迫されて、直腸が肛門の外に出てしまう病気です。
高齢の女性に多い病気で、直腸が脱出している状態は肛門部の強い不快感を伴うことが多くストレスの原因になります。
直腸が脱出するだけではなく、しばしば便もれ、粘液のもれや、粘膜からの出血により常に下着の汚れや、臭いを気にしなくてはならないこともあります。
脱出する直腸の長さは2~3cmの短いものから10cm以上の長いものまでさまざまです。

外科的治療

痔と異なり、直腸脱に内科的治療の効果は期待できません。
直腸脱はきわめて物理的な病気で、治療は直腸が本来あるべき場所から逸脱しないように、外科的手術をするしか方法がありません。手術法としては、肛門から行う方法と、腹部から行う方法があります。

経肛門アプローチ

脱出した直腸の粘膜を一部切除してから縫い縮める方法や、脱出直腸を縫い縮める方法、肛門周囲に糸をかけて、肛門を縫い縮める方法などがあります。
腰椎麻酔で行える安全な方法ですが、再発率が高いことが難点です。

経腹的アプローチ

肛門から外に脱出した直腸をあるべき場所まで吊り上げて戻し、骨盤に縫って固定し直すものです。
当院では腹腔鏡を用いて患者様の身体的負担の軽減を図り、脆弱な自己組織ではなく、固定用のメッシュを用いることによって、手術後の再発も格段と減少し、経肛門的アプローチのような局所の違和感もないため、患者様にも大変喜んで頂いただける方法と考えております。
全身麻酔が可能な患者様には、経腹的根治術をお勧めしております。